慢性下痢・過敏性腸症候群

下痢には、突然生じる「急性下痢」と、毎日続いたり再発を繰り返す「慢性下痢」があります。 「急性下痢」の殆どは、飲食の不摂生が原因だったり、細菌やウイルスが原因だったりで、一過性で終わる場合が殆どです。 また、「急性下痢」の場合は、西洋医学による治療でも容易に治す事が可能です。 厄介なのは、「慢性下痢」です。 特に、自律神経の乱れにより「過敏性腸症候群」となると、外出したり電車に乗ったり、人前に出たりすると腹痛を伴い便意が生じます。 これでは、毎日の生活に支障が出てしまいます。 「慢性下痢」は、西洋医学が苦手とする疾患ですが、漢方医学では得意とする疾患です。（但し、漢方医学でも難治なケースはあります）

慢性下痢の分類

肝脾不和（かんぴふわ）

精神的な緊張により肝気鬱結（かんきうっけつ）を生じる事で起こります。 俗に言われる「神経性下痢」です。「過敏性腸症候群」には、このタイプが多くなります。

脾虚（ひきょ）

脾虚というのは、消化器系全体のエネルギー不足で、胃も腸も膵臓も器質的には悪くないのですが、全てがきちんと働いてくれない状態を言います。 先天的な脾虚体質もありますし、食生活や生活習慣が悪く、長期にわたって脾胃（消化器系）に負担をかけたために脾虚体質になることもあります。 「水を飲んでも太る」と言う方も、「いくら食べても太らない」と言う方も、この脾虚体質になります。

腎陽虚（じんようきょ）

老人や虚弱体質の方に多く見られますが、近年では深夜勤務や昼夜逆転の生活をされている若い方にも、多く見られるタイプです。 生命のエネルギーでもある「腎精」が消耗する事で、「腎陽虚」が起こる事でとなり「下痢」が長期間続きます。 下痢をする事で、「気・血・精」が不足し、ますます「腎精不足」が起こるため、体力は消耗し下痢は長引いてしまいます。 （漢方でも難治に下痢です） 厳密には、「腎陽虚」のみではなく、「脾腎陽虚（ひじんようきょ）」という状態になっています。

漢方による治療法

①の場合は、肝気の流れを良くして、「肝気鬱結（かんきうっけつ）」が生じないようにします。 ②の場合は、脾胃（消化器系）の働きを良くし、湿（身体に不必要な水分）が発生しないようにします。 ③の場合は、脾と腎の陽気を補い、脾胃（消化器系）を温めて働きを正常に戻します。

慢性下痢・過敏性腸症候群の治療でよく使われる漢方薬

• 扶陽理中（附子理中湯）
• 六君子湯
• 参苓白朮散
• 小建中湯
• 牛車腎気丸
• 逍遙散
• 鹿茸大補湯
• 小柴胡湯

実際の治療には、体質によりこれらの漢方薬や、他の漢方薬を合わせて使用します。 当店で取扱をいたしております漢方薬は全て医薬品です

漢方薬は自己判断で服用しないようにしましょう。 服用の際には、必ず信頼のおける漢方の専門家へ御相談ください。 安全な漢方薬でも、使い方次第では危険な薬になってしまいます。